キラキラの素

めったにない都内への出張、都合よく夕方までかかったので、慣れない乗り換えに戸惑いながら天王洲アイルへ向かった。

ミュージカル「アメリ」の当日券を買った。

 

「アメリ」という映画があったことは知っていた。それ自体が魔法の呪文みたいで、あのビジュアル(蠱惑的なチャーミングな目線でこちらを見るおかっぱ頭の女の子)とともに胸に引っ掛かっていたんだろう。

 

だから、それを渡辺麻友さんがミュージカル女優としての初舞台で演じると知ってときめいた。

麻友さんには、当時の私の目を離させてくれなかった何かがあった。舞台で自身の目に映すことで、その"何か"がわかりはしないか、と思ったのだ。

その"何か"は、その頃の私にとってはすごくドンピシャで、比較する対象ではなくて、おそらく私(少なくとも当時は)にとって無条件的に好ましいと感じるものーーだったはず。

アイドル時代は私にとって身近なところにはいなかったから、同じ空間で、この目で、しかも彼女にとって本気の舞台を観られるのは魅力的だと思った。

 

そうはいっても、ミュージカルとて別に私の馴染んだグラウンドではない。しかも、(あと一押し、がなかなか入らなかったため)当日券を買わなくてはならない時期になってきていて、そのこともハードルを上げていた。

だから、こう思ったのだ。「たまたまタイミングよく夕方都内にいられたら、行ってみてもいいな」と。

この日は、半ばわかっていたことだけれど、まさにそのタイミングだった。

 

あてがわれた席はS席、4列33番。

 

想像以上に舞台の目の前だったが、開演してまゆゆが登場してくると、自分の目の前4mに立っていることにびっくりする。

 

キラキラしている。

涙がにじんだ。

 

違和感はまるでなかった。作り込んでいた。メインテーマのさわやかな不安定さはなんだろう。ずっと聴いていたい。美しい。

本当にこの役にかけて、大切に作ったんだなとわかった。これからの彼女に幸せが訪れますように。